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◆村岡総本舗だより（パソコンEメール版）◆
令和2年 12月号 Ｎｏ.231
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「日本遺産シュガーロード」カレンダー展
１１月２２日第五回日本一！ようかん祭り開催を機に、村岡総本舗が企画し１３年にわたり継続された
シュガーロードカレンダーの展示が村岡総本舗羊羹資料館で始まりました。
本年６月「砂糖文化を育くんだ長崎街道～シュガーロード」が日本遺産として認定され、地域における
伝統菓子に光があてられるところとなりました。
「シュガーロード」なることばが、この地域に普及した由来に村岡総本舗村岡安廣社長の活動がありました。
三田評論平成２２年１１月号への寄稿を紹介します。
村岡総本舗は明治三十二年創業以来百十一年、四代目として就業四十年目を迎えました。棹の形に切り
分ける煉羊羹の伝統製法は長崎起源であり、江戸期より長崎街道は砂糖街道すなわち「シュガーロード」
であったとの紹介が昨今数多くなされています。この由来に筆者の活動が関わったことは偶然とはいえ
大きな幸運であり、ここにその経過を記します。
平成四年佐賀市にて開催の日韓菓子交流シンポジウムには韓国宮廷料理人間国宝一号ファン・ヘソン先
生、次女でテレビ番組「チャングムの誓い」の監修者ハン・ボクリョウ先生の参加があり、餅文化中心の
菓子交流が九州をはじめとして日本各地で見られることが示されました。この時作成の図録「九州の朝鮮
文化―菓子の交流を探る」や新聞広告を元に百話にまとめた羊羹情報の集成「羊羹百話」等を購入された
江後迪子別府大学短期大学部教授がその後村岡総本舗羊羹資料館を訪問、菓子探訪の話がまとまり翌年は
ポルトガル領マカオへ出かけることができました。マカオではエッグタルトや鶏卵素麺等に出会い、平成
六年江後先生を中心としたポルトガルの旅が実現しました。
「西洋の骨董」と称されるポルトガルの地には菓子の伝統が色濃く残されており、ポートワインのポル
ト周辺のアロウカにはポルトガル産の陶板アズレージョの窯で焼くカステラ（＝パンデロー）の古い製法
が厳然として存在し、フェルゲイラスには十八世紀創業の旧王室御用達レオノール・ローサがありカステ
ラと丸ぼうろが製造されていました。ポルトとリスボンの間のアルファゼラオンのクリームのようなカス
テラや戦闘を意味するバターリャ修道院の威容、そして大スケール市で知られるバルセロッシュの鶏卵素
麺店の女性店主の気迫は中世までの世界帝国ポルトガルのパワーを強く感じさせるものがありました。
リスボンではベレム地区のジェロニモス修道院とパスティスデナタ（＝エッグタルト）、郊外の古都シン
トラのケイジャーダ（＝チーズケーキ）、ユーラシア西端のロカ岬等の古い歴史に思いを施せることがで
きました。レコンキスタまでのイスラムの雰囲気が漂うアルファマ地区はまさに千夜一夜物語の世界で、
この感動を持ち帰ろうと数多くの資料をかかえリスボンの街中を歩き回り郵便局に持ちこんだ荷物は制限
をはるかに越え、四十キロ以上というとてつもない重さとなっていました。
帰国後「ポルトガル菓子熱」にうなされていた状態の筆者に声をかけたのが元佐賀新聞社論説委員長で四
回の直木賞候補となった河村健太郎氏であったのです。平成八年創刊の文芸誌「月刊佐賀文化」に「肥前
シュガーロードを行く」の原稿依頼があり、以後八回の連載が始まりました。「シュガーロード」の台頭に
より貴重な生活文化である小城羊羹などの伝統菓子に大きな光が当りはじめています。
平成１８年から３０年にわたり、シュガーロードをタイトルとしたカレンダーが村岡総本舗にて制作さ
れ、肥前（佐賀・長崎）を中心とした広範にわたる砂糖の道が紹介されました。今回の展示は全７８枚の
内２０枚を展示するもので、モノクロの細密な画像が、シュガーロード各地のエネルギーを余すことなく
伝えています。
村岡総本舗本店、村岡総本舗羊羹資料館は小城市において日本遺産の構成遺産、いわゆる日本の宝とし
て認定された４件の内の２件としての名誉を得ることができました。砂糖文化を育んだシュガーロードの各
地の独特の風土を表したモノクロ写真の画像の格調ある表現を、村岡総本舗羊羹資料館にてお楽しみいただ
きますようご案内申し上げます。
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